一般事業会社での社会人経験を待つメリット

税理士としての独立開業は、当然ながら税理士資格が必要となります。この税理士資格には、2年間の実務従事要件があり、登録者の多くは、税理士事務所または税理士法人で修行を積んで要件を満たすケースが多いのではないかと思います。この実務要件ですが、一般事業会社での経験であっても、租税、会計に関係する業務、平たく言えば経理業務経験で申請することができます。私は、現在の税理士法人に勤務する前に事業会社での経理経験が4年間あり、この実務経験をもって要件を満たしている旨の申請をし、税理士登録をしました。
この、事業会社での経験を挟んで税理士となるケースは、最近こそ増えていますが、まだまだ少数派かと思います。事業会社を経験したことを今振り返ってみると、けして遠回りだったわけではなく、メリットも多かったと実感しています。
本日は、事業会社を経験するメリットについてまとめていきたいと思います。

ビジネスマナーが身につく

けして、税理士事務所でこのような経験ができないというわけではなく、両方経験した私の主観で、どちらの方が経験できると思ったか、で書かせて頂きます。私は、事業会社での勤務時代の方が、いい意味でも悪い意味でも、社会人としてのビジネスマナーの大事さを経験することができました。

具体的には、一般的なビジネスマナーである名刺の渡し方や敬語の使い方、服装、メールの書き方、エレベーター、タクシーでの立ち位置や、組織内での上下関係での礼儀などです。私の務めた会社はゆるい方だったとは思いますが、やはりこのような社会人としての一般的な振る舞いは、事業会社で学ぶことの方が多く、税理士事務所で細かく学ぶことはできませんでした。

全ての税理士事務所職員のビジネスマナーがなってない、というつもりはありませんが、結構な確率で、信じられないような名刺の渡し方、挨拶、メールな出し方をする職員が存在します。彼らが悪いと言うわけではなく、そのような作法が必要であることを周知徹底できるような環境が整っていない (そもそも、組織化して人を育てる気概のある事務所の方が少ない)ケースが多いと思います。

お客様は当然社会人ですので、このような礼儀作法(常識と考えること)を経験することができたことは、大きなメリットと思います。

会社という組織の中を知れたこと

私はこの点が、現在税理士実務を行う上で一番のメリットであったと考えています。

会社という組織は、たくさんの人間が歯車となりながら会社を動かしています。そのため、仕事をスムーズに進めるためには、まずは何よりも組織の力関係、人間関係(派閥や過去の経歴など)を把握し、意思決定に当たるまでに様々な根回しをすることが重要となります。実務能力だけではなく、この悪く言えばいわゆるゴマをするような行為、よく言えば事前の根回しが、仕事を良好に進めるための不文律であり、その会社独自の暗黙の了解が多数存在しているのではないかと思います。

会社の外部の人間からすると信じられないような意思決定の顛末となったり、そもそも意思決定に時間を要するすることは往々にあるかと思いますが、その会社独自の不文律が作用しているのではないかと思います。

税理士事務所職員からすると、このような作法はくだらないと意に介さないか、そもそも理解できないことが多いのではないかと思います。しかし、何度も書きますがこのような意思決定機関を要するお客様を我々は相手にしているのであり、我々は会社内の力関係、組織図を理解した上で、会社を良くするためのコンサルティング、会社の意思決定がスムーズに進むための資料作り(誰に刺さる資料を作ればいいのか)を日々考えながら作業しなければならないのだと思います。会社の内部にいた経験があると、お客様の現状や背景を実体験に基づいて肌で感じることができ、この点がおおきなメリットかと思います。

特に、経理という業務は成功という概念は少なく、ちゃんとできてあたりまえ、むしろ失敗だけが目につく職業です。どうしてもこのような組織内で働く方は(ミスが多くなるため)変化を好まず、また、全体最適よりも自身の業務範囲を死守することが優先される傾向にあると思います。我々税務コンサルタントは、このような心理的背景を理解した上で、会社にとってベストなソリューションを提供していく必要があるのだと思います。

そもそも登録の了解が得やすい

話を元に戻しますが、税理士の実務経験は、その実務経験を得た事務所、会社から証明書を入手する必要があります。税理士事務所の職員が、この証明書の入手を事務所から拒否されたり、登録した直後に退職を斡旋されるようなケースをよく耳にします。所属事務所からすれば、登録後お客さんを奪われてしまうかも知れないという心情から、このような仕打ちが行われるのだと思います。この点、事業会社からの証明書の入手に関しては、このような利害関係が生じず、合意を得やすい傾向にあると思います。

まとめ

以上が、事業会社で社会人経験を積むことのメリットとして私が考える点です。事業会社での経験は、税理士としての専門性の観点からはデメリットが生じますが、顧問先の内情を理解するためには必要な技能かと思いますので、これから税理士の登録や開業を目指す場合には、その前に事業会社への転職も選択肢に含めて検討する必要があると思います。

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