税理士損害賠償請求①事例編

以前のブロク記事で。税理士事務所を開業するうえでのデメリット・不安として、「訴えられるリスク」について記載をしました。

https://kamimoto-tax.com/開業準備中に考えておくこと③開業のデメリット

今回は、この税理士が顧問先から訴えられるリスク、いわゆる税理士損害賠償請求についてもう少し掘り下げて考えていきたいと思います。今回は①事例編として、どのような事案で顧問税理士が訴えられているか、についてまとめていきます。(過去の裁判となった事例を簡単に紹介させていただきます)

そもそも、なぜ税理士は顧問先から訴えられやすいか

個別事例に入る前に、まずは、なぜ税理士は顧問先から訴えられやすいかに、ついて考えてみたいと思います。理由は2つあると思います。

1つ目:顧問先に税務調査が行われてミスが発覚し、追加の納税が発生する。税の専門家に依頼しているのに、会社が損害を被った、という論理(不満)が会社に植えつけられる。

2つ目:具体的に損害をを被った金額(=追徴金額)が容易に計算できてしまう。

この顧問先の心理状況かつ損害額とその過失(ミスであったか)を立証しやすい状況から、税理士に対しての損害賠償請求は通常よりもハードルが低く感じられてしまうように思います。(そもそも、普段のコミュニケーションにも問題があるのかもしれませんが)

ケース①税理士自身の法令解釈の誤り(単純ミス)

まず、これが一番多い事案かと思います。税理士自身の解釈の誤りにより、税額控除の適用を失念した、消費税の計算方式の選択を誤った、消費税課税事業者となるべきであったのに届出を失念したなど、法令順守ないしは有利選択の判断を誤り、シンプルに(取返しのつかない)ミスを犯し、納税者が損害を被ったケースです。これは最も肝に銘じなければならないケースです。

しかし、常に頭に入れておかなければいけないのは、次以降のケースかと思います。

ケース②顧問先のミス(不正)に気づくことができなかった

税理士は、税務に関する専門家として、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命とする専門職であり、納税者から税務申告の代行等を委任されたときは、委任契約に基づく善管注意義務として、委任の趣旨に従い、専門家としての高度の注意をもって委任事務を処理する義務を負うものと解されています(東京地裁平成22年12月8日判決)。

そのため、顧問先が資料を提供しないので、裏を取らずに言っていることを真に受け申告し、後日税務調査等でミスや不正が発覚したとしても、税理士はこの善管注意義務を怠ったとされる可能性があります。(厳密には、契約上の業務範囲の記載や契約の有無にもより軽減される可能性はあります)

具体的には、

・不動産賃貸業を営んでいるのに賃貸収入しか売上計上がなかった。→礼金収入もあるはずであることを見抜かなければならない

・法人の所在地と代表者の住所が同一 →個人に家賃収入が生じていたこと見抜かなければならない

・人件費には、外注費以外の労務費が含まれているかもしれないことを確認しなければならない

・日本国籍を有しているかは、国籍法に基づき検討を行わなければならない(すなわち、税の専門家として、租税解釈に関係するのであれば租税に関する法令以外の法令についても調査確認しなければならない!)

など、税理士目線ではかなり酷な事例が見受けられます。

ケース③税理士の説明が不足していた

税理士は、善管注意義務に基づき、依頼者に対して関連税法及び実務に関して、有益な情報及び不利益な情報を提供し、依頼者が適切に判断できるように説明および助言をしなければならないこととされています。(税理士の説明助言義務)

このケースに当てはまる損害賠償事例としては、以下が当てはまります。

・被相続人が海外に居住していた経歴があったことから、海外資産を保有している可能性を認識しうる状況であったのにもかかかわらず、海外財産が相続財産に含まれる旨の説明が行われていなかった。

・税務申告が期限までに行われなかった場合や、適正な申告が行われれなかった場合には、後日ペナルティが課されることについて説明が行われていなかった。

・相続税を納税期日までに納められない場合の延納申請について説明が行われていなかった。

このように、税理士側からすればわざわざ言わなくても、と説明を省略してしまう、もしくは説明をしたとしてもその証拠が残っていない場合には、税理士側の説明助言義務が問われることとなります。

ケース④顧問先以外から訴えられる

税理士が署名捺印した税務申告書に基づき、銀行が融資を判断し実施するケースなど、税務申告書は一定の信頼性を評価されてしまう書類であるため、虚偽の決算書に基づいた申告書などにより金融機関が融資判断を誤った場合に、不法行為責任を問われるケースがあります。

また、顧問先から取引先の税務相談を受けたり、友人から相談を受けたりした場合などに、税理士自身は軽い気持ちでアドバイスしたつもりであっても、後日そのアドバイスが誤っていた場合には、(たとえ無報酬かつ口頭であっても)その取引先や友人と口頭での委任契約が成立していることを前提に損害賠償責任に発展する可能性があります。この点は本当に気を付けなければならない点かと思います。

最後に

以上が、税理士損害賠償事例についてのまとめとなります。

次回以降にこの対策案について検討してしていきたいと思います。税理士賠償はその損害額によっては一発アウト(破産)となる可能性が高く、破産すると税理士資格すら剥奪されるため、本当に取り返しがつかなくなります。本当に明日は我が身、身が引きしまる思いですが、覚悟をもって、(リスクヘッジを検討しつつ)準備を進めていきたいと思います。

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