2020年度税制改正のポイント②個人編(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)

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本日は、前回に引き続き、個人所得税に関する改正のうち、本改正で新設された「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」について、改正内容を掘り下げていきたい思います。

国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例

改正が行われた背景

現在、富裕層の間では、節税策として、国外中古建物への投資スキームというものが存在していたようです。

具体的には、日本の税制において住宅用建物の減価償却耐用年数は、木造であれば22年、鉄筋コンクリート造りであれば47年と定められていますが、海外の建物には築年数が100年を超えるようなものも珍しくなく、価格も下がりにくいため、税法上の耐用年数と実際の耐用年数には大きな開きがありました。また、日本の税制上、中古建物にはその経過年数に応じて税制上の耐用年数(償却期間)を短縮する特例が認められています。経過年数が税法上の法定耐用年数に近いところまで経過している建物を取得した場合、海外の基準ではまだまだ使用可能期間を有しているにもかかわらず、この取得した国外中古建物に係る減価償却費を、(木造であれば)早ければ4年で償却しきってしまうことができます。

この節税策は、「海外の建物の実際の耐用年数の長さ」「日本の税制のゆがみ」を巧みに利用したスキームでした。海外中古建物を取得し、得られる賃貸収入を大幅に上回る減価償却費を短期間で計上することにより、その減価償却費が計上できる期間の不動産所得で赤字を作ることができます。そして、その赤字を本業の給与所得等と相殺することで、個人所得税が節税できるというスキームでした。本改正では、この節税スキームについて、穴埋めが行われています。

改正の概要

国外中古建物を賃貸し、不動産所得を有する場合に、不動産所得の金額の計算上、損失の金額が生じたときは、その国外中古建物の減価償却費に相当する金額は生じなかったものとみなされます。 (つまり、減価償却費が経費計上できなくなります)

なお、実務上の懸念点としては、以下が挙げられます。

・本改正は対象者が富裕層等の縛りがなく、該当するすべての個人が対象となってしまう(海外勤務時に現地で小さな住居を取得したしがないサラリーマンが、日本帰国後に賃貸しているような場合も対象となってしまう)

・税法上の耐用年数(償却期間)を見積もり法により計算した場合、その使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がない場合には、本改正の適用対象となる(逆に、この書類を準備できれば、課税を免れる可能性あり)

・この適用を受ける場合には、その後国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の計算上も、その減価償却費相当額が除外される(譲渡経費にならない)可能性がある

適用時期

令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる国外不動産所得がある場合(損失がある場合)に適用されます。

なお、上記の内容は、ブログ記載時点の概要となります。具体的な事案は各専門家へご相談ください。

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