税理士損害賠償請求②税賠保険の検討
新横浜で税理士事務所開業予定 KRYブログにお越しいただきありがとうございます。
本日は、以前まとめた税理士損害賠償請求①事例編に続いて、税理士職業賠償責任保険について検討したいと思います。
税理士職業賠償責任保険(税賠保険)とは
「税理士職業賠償責任保険」とは、税理士または税理士法人が、その資格に基づいて行った業務に起因して保険期間中に日本国内で損害賠償請求を受け、法律上の賠償責任を負担したことにより被る損害のうち、一定のものについて、被保険者である税理士または税理士法人に保険金が支払われるものです。前回のブログに記載の通り、税理士が訴えられるケースは増加傾向にありますので、この保険加入はマストで検討すべき項目となります。
税賠保険の加入状況
2019年7月における税賠保険の加入状況は、以下の通りです。(株式会社日税連保険サービスHPより転載)
現在、個人税理士の加入率過半数を下回っている(49.7%)状況です。あまりに低すぎる数値と思いますが、大半の税理士がこの保険に加入しても意味がない、と考えているのも事実です。その理由は、ズバリ「免責事項の範囲」です。税理士に対する損害賠償請求の多くが、この免責事項に該当してしまう可能性があるため(結局保険金が支払われないことが多いため、)加入が伸び悩んでいるものと推察されます。
税賠保険の免責事項とは
税賠保険の免責事項のうち代表的なものものとして、以下が挙げられます。
①過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、延滞税、利子税または過少申告加算金、不申告加算金もしくは延滞金に相当する損失
②重加算税または重加算金を課されたことに起因する賠償責任
③納付すべき税額を過少に申告した場合に.本来納付すべき本税(又は本来還付を受けられなかった税額)
※「本来納付すべき本税」および「本来還付を受けられ なかった税額」とは、税制選択その他の事項に関する被保険者の過失がなかったとしても被害者が納付する義務を負う本税または被害 者が還付を受ける権利を有しない税額をいいます。
上記を解説しますと、まず、
税理士損害賠償請求が発生した場合に請求される可能性が高い加算税、延滞税等は、保険の対象外となっています。
そして、税理士損害賠償賠償請求に発展することが想定される重加算税案件については、そもそも保険の対象外となっています。
最後に、税理士の過失がなかったとしても被害者が納付する義務を負う本税について保険の対象外となります。これは税理士に過失(落ち度)はない、という案件ですので、ある程度イメージがつきやすいかと思います。
どういうケースで保険が適用されるのか
では、どのようなケースで保険の対象となるのでしょうか。
ざっくりと申し上げると、税制の有利選択の際に、税理士が単純ミス(過失)をして、納税者の税金負担が増加してしまった場合です。
代表的なものは消費税の届出の出し忘れ、適用誤りや、優遇税制の適用もれなどが考えられます。
つまり、ちゃんとチェックしていれば防げたであろう過失があった時は保険金がおりますが、それ以外にはほぼ保険の対象外となってしまうのです。
そのため、個人税理士の多くは、結局入っても、いざという時に使えない可能性があるため、加入しないとの判断をしているケースが見受けられます。
最後に
以上が、税理士職業賠償責任保険の概要となります。免責事項の範囲を改めて確認しますと、本当にはある意味あるのかな?と疑問に感じてしまいますが、いつ自分が単純ミスを犯すかわかりませんので、保険には加入すべきと思います。もちろん、私は加入予定です。
なお、今回はふれられませんでしたが、この保険には特約(オプション)もあり、責任のカバー範囲をある程度手当てすることが可能ですので、次回以降改めてまとめていきたいと思います。
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